平成21年度税制改正

1.中小企業の軽減税率をさらに引下げ

 

(1)   中小企業の軽減税率を18%に引下げ

中小法人等の平成21年4月1日から同23年3月31日までの間に終了する各事業年度の所得金額のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率が、これまでの22%から18%に引き下げられます。

従前 改正後
中小法人等の軽減税率
(所得金額年800万円以下の部分)
22% 18%

 

(2)   欠損金の繰り戻し還付制度の復活

中小法人等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、欠損金の繰戻しによる還付制度が摘用できるようになります。これにより、例えば平成21年3月の決算が赤字の企業の場合、前期の年間所得からその赤字を差し引いた額で前期の法人税を計算し直して、納めた法人税の一部が還付されることになります。

【欠損金の繰戻しによる還付の請求(法法80①)】 青色申告書である確定申告書を提出する法人は、その確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額がある場合には、その事業年度(以下「欠損事業年度」といいます。)開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下「還付所得事業年度」といいます。)に繰り戻して法人税の還付を請求することができる制度です。この制度の適用を受けるためには、次の①から③のいずれかにも該当する必要があります。

①還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで連続して青色申告書である
確定申告書を提出していること

②欠損事業年度の確定申告書を青色申告書により提出期限内に提出していること

③確定申告書の提出と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出していること

→この制度の適用を受けるためには、欠損金額が生じた事業年度の確定申告書を期限内に提出し、かつ、その提出と同時に、納税地の所轄税務署長に所定の事項を記載した還付請求書を提出する必要がありますのでご注意下さい。

(3)   役員給与の事前届出の記載の簡素化

役員給与の事前確定届出給与の届出について、その役員の前期の給与及び他の役員の給与の記載を省略し簡素化が図られます。

(4)   棚卸資産の評価方法の見直し

棚卸資産の評価方法について、選択できる評価方法だった後入先出法及び単純平均法の二つがはずされます。

(5)   優良賃貸住宅の割増償却制度の割増率の見直し

優良賃貸住宅の割増償却制度(通常の減価償却のなかに5年間にわたって割増して償却できる)における高齢者向け優良賃貸住宅に係る措置について、次のとおり割増率の見直しをした上、その適用期限が2年延長されます。

一定の認定支援施設と一体として整備が行われた支援施設一体型高齢者向け優良賃貸住宅及び認定支援施設

従前 改正後
耐用年数35年未満であるもの 28% 40%
耐用年巣35年以上であるもの 40% 55%

前記の支援施設一体型高齢者向け優良賃貸住宅以外の高齢者向け優良賃貸住宅

従前 改正後
耐用年数35年未満であるもの 28% 20%
耐用年巣35年以上であるもの 40% 28%

(6)   試験研究費の特別税額控除制度の範囲拡大

産業技術力強化法の一部改正に伴い、試験研究費に係る特別税額控除制度について、特別試験研究費の範囲に、改正後の同法に規定する試験研究独立行政法人と共同して行う試験研究に係る費用及び同法人に委託する試験研究に係る費用が加えられます。

(7)   土地等の先行取得をした場合の課税の特例の創設

事業者が、平成21年1月1日から同22年12月31日までの間に、国内の土地等を取得し、その取得日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までに、この特例の適用を受ける届出書を提出している場合、その取得日を含む事業年度終了日後10年以内に、その事業者の所有する他の土地等を譲渡したときは、他の土地等の譲渡益の80%相当額(その先行して取得した土地等が平成22年1月1日から同22年12月31日までの期間内に取得をされたものである場合には60%相当額)を限度として、圧縮記帳ができることになります。

※土地等が棚卸資産である場合には、この適用はできません。

(8)   取得した土地等の長期譲渡所得からの
1,000万円特別控除制度の創設

平成21年1月1日から同22年12月31日までの間に取得をした国内にある土地等で、その年の1月1日において所有期間が5年を超えるものを譲渡した場合には、その年中のその譲渡に係る長期譲渡所得の金額から1,000万円(その長期譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合には、その長期譲渡所得の金額)が控除されます。この特別控除は、個人も同様となります。

(9)   租税特別措置の縮減・廃止・延長

[縮減等]

・       事業革新設備の特別償却制度

対象となる計画から共同事業再編計画に係る措置及び技術活用事業革新計画に係る措置及び技術活用事業革新計画に係る措置を除外するとともに、償却割合を25%(従前30%)に引き下げた上、その適用期限が2年延長されます。

[廃止]

・       電子計算機買戻損失準備金制度

[延長]

以下のような事項の適用期限が延長されます。

 ・特定の資産の買換えの場合等の課
税の特例における、長期所有の土
地、建物等から国内にある土地、
建物、機械装置等への買換え
3年延長
 ・中小企業等基盤強化税制
※本税制の統合されている中小企
業者等の教育訓練費に係る税額控
除制度も2年延長されます。
2年延長
 ・障害者を雇用する場合の機械等の
割増償却
 ・事業所内託児施設等の割増償却
 ・公益法人等又は共同組合等の貸倒
引当金の特例における繰入限度
を100分の116とする措置

2.住宅ローン減税の大幅拡充・延長

(1)  住宅ローン減税は10年で最高500万円の控除

住宅ローン減税については、適用期限を5年延長するとともに、次の措置が講じられます。

①住宅の取得等をして平成21年から同25年までの間に居住した場合の控除期間、住宅借入金等の年末残高の限度額及び控除率は次のようになります。

居住年 控除期間 住宅借入金等の
年末残高の限度額
控除率
(控除限度額)
平成21年 10年間 5,000万円 1.0%(500万円)
平成22年 10年間 5,000万円 1.0%(500万円)
平成23年 10年間 4,000万円 1.0%(400万円)
平成24年 10年間 3,000万円 1.0%(300万円)
平成25年 10年間 2,000万円 1.0%(200万円)

②「長期優良住宅の普及の促進に係る法律」に規定する認定長期優良住宅に該当する家屋で、一定のものの新築又は建築後使用されたことのない認定長期優良住宅の取得をして平成21年から同25年までの間に居住した場合の特例が創設されます。その控除期間、住宅借入金等の年末残高の限度額及び控除率は次のようになります。

居住年 控除期間 住宅借入金等の
年末残高の限度額
控除率
(控除限度額)
平成21年 10年間 5,000万円 1.2%(600万円)
平成22年 10年間 5,000万円 1.2%(600万円)
平成23年 10年間 5,000万円 1.2%(600万円)
平成24年 10年間 4,000万円 1.0%(400万円)
平成25年 10年間 3,000万円 1.0%(300万円)

③居住用として取得した住宅に、やむを得ない事由により住まなくなった後に、再びその住宅を居住用とした場合、一定の要件の下で、住宅ローン減税が受けられます。適用は、平成21年1月1日以後に自己の居住用としなくなった場合です。

④所有している家屋について、居住する前に増改築等をして、6ヶ月以内に居住した場合には、住宅ローン控除が受けられます。なお、この措置は、増改築等をした居住用家屋を平成21年1月1日以後に自己の居住用とする場合に適用されます。

(2)  長期優良住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の創設

住宅用とする認定長期優良住宅の新築又は建築後使用されたことのない認定長期優良住宅を取得して、法律の施行の日から平成23年12月31日までの間に居住した場合(その新築等の日から6ヶ月以内に居住した場合に限る)には、一定の条件の下で、その認定長期優良住宅の新築等に係る標準的な性能強化費用相当額(1,000万円を限度)の10%に相当する金額をその年分所得税額から控除(その控除をしてもなお控除できない場合には、翌年分の所得税額から控除)できます。

なお、この特別控除は、住宅ローン控除制度との選択適用となります。

(3)  既存住宅に省エネ改修工事などをした場合の
所得税額の特別控除の創設

居住する家屋について一定の省エネ改修工事を行った場合、あるいは一定の居住者が居住する家屋について一定のバリアフリー改修工事を行った場合において、平成21年4月1日から同22年12月31日までに居住したとき、一定の条件の下で、その改修工事費用とその改修工事に係る標準的な工事費用相当額のいずれか少ない金額の10%相当額がその年分の所得税額から控除される制度が創設されます。

住宅ローン控除制度及び特定の増改築等に係る住宅ローン控除制度の控除額の特例を受ける場合は適用されません。

(4)  所得税額からの特別控除の延長

①特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額からの特別控除の控除額に係る特例の適用期限が5年延長されます。

②既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額からの特別控除について、一定の措置を講じた上、その適用期限が5年延長されます。適用は、平成21年1月1日以降に行う住宅耐震改修からです。

(5)  証券税制の延長

①上場株式等の配当所得及び譲渡所得等に対する税率の特例の見直し

平成21年1月1日から同23年12月31日までの間の上場株式等の配当所得及び譲渡所得等に対する税率が7%(住民税とあわせて10%)の軽減税率とされます。

②上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例の延長

ア.平成21年1月1日から同22年12月31日までの間に支払われる上場株式配当などに係る源泉徴収税率に対する7%(住民税と合わせて10%)軽減税率の特例が1年延長(平成23年12月31日まで)されます。

イ.内国法人もしくは外国法人等に対して支払われる上場株式等の配当等に係る7%軽減税率の特例が、平成23年12月31日まで(従前では同21年3月31日まで)延長されます。

③源泉徴収選択口座の源泉徴収税率の特例を延長

平成21年1月1日から同22年12月31日までの間の源泉徴収選択口座における源泉徴収税率に対する7%(住民税と合わせて10%)軽減税率の特例が1年延長(平成23年12月31日まで)されます。



コメントは受け付けていません。